2007年秋季号

マーケットセンサー メディアとしての新聞の役割

明治学院大学 経済学部
教授 清水  聰


 インターネットの登場により、消費者の情報格差が広がったと言われている。従来までのメディア、即ちテレビ、新聞、雑誌、ラジオの4媒体だけを依然として主たる情報源として生活している人もいれば、積極的にインターネットを駆使して収集し、プロ顔負けの知識を持っている一般消費者もいる。このような状況の下、新聞はどのような役割を果たしているのだろうか。筆者監修の下、(社)新聞協会で行った調査によれば、興味深い知見がいくつも得られている。

  まず、意思決定の最初の段階である商品認知では、新聞(40.2%)、企業のホームページ(36.6%)、テレビ(31.3%)、口コミサイト・比較サイト(19.8%)の順に、役立つメディアがあげられていた。商品認知の段階では、新聞やテレビ、それに企業のホームページといった、企業側が情報提供主の情報が大きな力を持っており、特に新聞はこの分野で強い。

  これが情報を探索する段階になってくると、その重要度が変わってくる。インターネットと新聞でその利用目的の違いを探ったところ、新聞が世の中の動きを知るため(76.4%)、重要な情報を押さえておくため(46.5%)、といった情報の起点となる目的で利用されるのに対して、インターネットは趣味に役立つ情報を得るため(67.8%)、自分が関心を持った情報をより詳しく知るため(61.4%)といった、情報を探索する目的でよく利用されることがわかる。新聞やテレビ、企業のホームページなどで商品を認知した消費者は、インターネットでより深い情報を探るという流れになっていると考えられる。

  では、新聞を利用しない人と、新聞を利用する人では、ネット上の情報利用にどのような違いがあるのだろうか。新聞もネットも多い人(37.7%)と、新聞は少ないがネットは多い人(33.9%)で、ネット上のメディア利用の違いを探ると、前者が企業のホームページ(16.3%に対して13.8%)、新聞社のニュースサイト(24.1%に対して16.5%)をよく利用しているのに対して、後者はコミュニティーサイト(15.9%に対して24.8%)や個人のサイト・ブログ(27.9%に対して30.6%)、掲示板サイト(27.9%に対して18.7%)の利用が多い。これは、新聞を読んでいる人は企業や新聞社のホームページで流れる公式的な情報を利用するのに対して、新聞を読まない人は、ブログや掲示板など、誰かが解釈した二次的な情報を利用していることになる。同じネット上の情報でも、使う人が違うようである。

  では掲示板やブログに発信をする人はどんな人か。消費者の意思決定プロセスに合わせて探ったところ、商品の購入に際し、最初に認知・関心を強く持った人の方が、そうではない人よりも16倍も多く発信することがわかった(4.8%に対して0.3%)。認知を持たせるメディアとしては、テレビや新聞、企業のホームページが役立っていることから、ブログや掲示板、コミュニティーサイトの情報も、それら情報提供企業の情報を利用している人が発信した情報の割合が高いことになる。つまり、新聞の情報は、新聞を読まない人に対しては直接影響しないが、ブログや掲示板などを通じて、間接的に影響していることになる。新聞は依然として大事なメディア、なわけだ。

プロフィル
1963年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、同大学院修士課程、博士課程を経て1991年、明治学院大学専任講師。助教授を経て2000年より現職。博士(商学)。専門はマーケティング、特に消費者行動論。著書に「新しい消費者行動」、「消費者視点の小売戦略」、「戦略的消費者行動論」(いずれも千倉書房)がある。



バックナンバー
07年秋季号 メディアとしての新聞の役割
07年初冬号 目利きさんと死神さん
08年新春号 聞き耳層の役割
08年春季号 消費者の情報接触活動と商品分類
08年新緑号 選択される旅行の違いとメディアの違い