2008年春季号

マーケットセンサー 消費者の情報接触活動と商品分類

明治学院大学 経済学部
教授 清水  聰


 このコラムで以前触れたように、消費者は自分が選ぼうとしている商品によって、情報収集するメディアを変化させる。例えば自動車を買い替える場合、価格も高く、選択を誤った際のリスクが大きいので、販売店に行く前に雑誌やインターネットで情報収集を行い、販売店でセールスマンの話を聞き、その話を持ち帰って友人・家族に意見を聞くなどして、時間をかけて意思決定するだろう。これに対して、ビールの新製品を買う場合は、事前にインターネットで調べたり、店頭で店員さんに尋ねるといったことはせず、チラシやテレビCM、店頭などの情報で購入するはずだ。選択を誤った際のリスクが小さいためである。前者の意思決定ルールを情報処理型、後者を刺激反応型と専門的には言う。

  筆者は大日本印刷株式会社と共同で、2000年より消費者の意思決定プロセスにおけるメディア接触の調査、通称メディア・バリュー研究を行ってきた。この調査では、商品との関係を普段、比較検討、購入の際、購入後の4段階にわけ、その段階ごと・商品カテゴリーごとに、利用しているメディアを調べている。各段階でのメディア利用のデータを商品カテゴリーごとに集計したデータを、多変量解析手法の一つであるクラスター分析にかけると、メディアの利用の仕方が似ている商品とそうではない商品が明らかになる。

  最新の2007年調査による分類では、調査対象とした15の商品カテゴリーは大きく4つに分類された。第一グループの菓子・ジュース・アルコール・加工食品と、第2グループの化粧品・健康食品・書籍・音楽映像ソフトは、意思決定のどの段階でも店頭販促物の利用が多く、その他のメディアでは街頭広告・車内広告を利用している。意思決定の各段階で受動的な刺激を与えるメディアをよく利用するので、刺激反応型に属する商品カテゴリーといえる。

  これに対して、第3グループの洋服・家具インテリア、第4グループのパソコン・自動車・家電・旅行では、普段はパンフレット・フリーペーパー、通販カタログ、DMなどのメディアに触れ、比較検討・購入検討・購入後には店員や販売員情報など、人的メディアに触れる人が多い。店員や販売員の情報、パンフレット・フリーペーパーなど自ら積極的に情報を集めなければならないメディアを利用する割合が高く、情報処理型の意思決定プロセスを用いる商品群と結論づけられる。

  新聞に関して言及すれば、どの商品グループでも、「普段接しているメディア」として新聞を挙げる数は多い。特に40歳以上で支持が高く、特定の商品では書籍で新聞の支持率が高い。他の商品とは異なり、書籍だけは比較検討だけではなく、購入検討にも新聞が役立つことが示されている。

 商品によって消費者は利用メディアを使い分けていることから、自社商品をコミュニケートするのにふさわしいメディアを選び、組み合わせなければ伝わらない。新聞に関して言及すれば、普段のきっかけメディアとしてはふさわしいが、書籍を除けばそれ以降の意思決定にはそれほど大きな力を持っていない。そうなると掲載するメッセージは何がいいのか。消費者視点でメディアの役割を考えていく必要があるだろう。

プロフィル
1963年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、同大学院修士課程、博士課程を経て1991年、明治学院大学専任講師。助教授を経て2000年より現職。博士(商学)。専門はマーケティング、特に消費者行動論。著書に「新しい消費者行動」、「消費者視点の小売戦略」、「戦略的消費者行動論」(いずれも千倉書房)がある。



バックナンバー
07年初冬号 目利きさんと死神さん
08年新春号 聞き耳層の役割
08年春季号 消費者の情報接触活動と商品分類
08年新緑号 選択される旅行の違いとメディアの違い
08年盛夏号 「続きは.comで」は本当に役に立つのか